第7章 君は陽だまり
「伊黒と文通ねぇ…?」
伊黒が甘露寺を気に入ってるのは何となく気付いていた。アイツとは何度か生い立ちについて話したことがあったからな。
しかし、甘露寺もほの花もそんな生い立ちなど気にもしないのだろう。
こうやって素直に感じて、喜んで、泣いて、笑って…。
生い立ちに引け目を感じるからこそこういう屈託のない表情をする女に惹かれるものなのかねぇ。
「なんだか甘酸っぱいと思いませんか?それでその時に足を挫いてしまったので、蜜璃ちゃんに肩を借りて帰ってきました。あ!途中で本物の伊黒さんともお会いしました。」
「おー、伊黒とも会ったのか。」
「はい、あ!でも、蜜璃ちゃんに肩を貸してもらっただけです!伊黒さんは家まで一緒に着いてきて下さっただけです!」
「わぁーってるって。」
どう考えても伊黒の奴はほの花ではなく、甘露寺が気になってついて行ったに決まってるし、ほの花にそう言う気は無いと思う。
大体の経緯は分かったが、やはりことの発端はこの身に付けてる隊服のせいだと思うと、縫製係をシメないと気がすまねぇ。
「…えと、ということで捻挫しました。」
「…ん。よくわかった。お仕置きはさっき言った按摩でいいぞ。」
「え?按摩でいいんですか?!わーい!良かったぁ!鍛練を100倍にしろとか言われたらどうしようかと思ってました…!」
「いくらなんでも流石にそこまでさせるか。だが、肩が凝ったからなぁ?今日は特別濃厚な按摩をしてもらおうか?ほの花ちゃん。」
あわよくばそのまま押し倒してやろうと思っているのにほの花があまりにも嬉しそうに笑うものだから邪な気持ちで按摩を頼んだ自分がどうも悪いことをしている気になってしまった。
「宇髄さんの気の済むまでたっぷり按摩するので何でも言ってくださいね!」
純粋無垢過ぎる反応に押し倒そうとしていた自分が随分酷い男に見えてしまい、途端に後ろめたさが付き纏う。
そしてそうとは知らずに屈託のない笑顔を向けるほの花に遠い目をしてしまった。
(…俺はいつ報われるんだ…。)