第34章 世界で一番大切な"師匠"※
甘い。
すげぇ、甘ェ。
何だ、よくわかんねぇけど、甘くてもっと触れたくなる。
柔らかな唇は先日吸い寄せられた時に感じたそれに間違いない。
首の後ろに手を回して後頭部を鷲掴みにすれば、より深くなり舌を無遠慮に口内で絡め合ってやる。
逃げる舌を捕まえて己の口内に引き寄せれば逃すまいとじゅるじゅると吸い取ってやれば、だんだんと抵抗しなくなってきたほの花。
それに気を良くした俺は首筋にそのまま唇を這わせた。
止めろ。
止めないともう二度と戻れないぞ。
構うもんか。
戻れなくていい。
戻る必要なんてねぇ。
今、俺はコイツしか欲しくない。
首筋を下から上に舌でペロリと舐め上げるとビクッと体を震わせるが嬌声はない。
目を固く閉じて、口を真一文字に噤み全く声を出そうとしない。
俺がしてることを咎めるわけでもなく、ただただ我慢をしているほの花を見ると乱れた姿が見たくてたまらなくなる。
そんな俺は性根が腐ってるのかもしれない。
仮にも継子で、俺には嫁が三人いる。そいつらの留守中に継子を押し倒すだなんて卑劣で鬼畜な行為だ。
わかっている。わかっちゃいるけど…
もう遅い。
それでも何も言わずに俺のこの行為を受け入れているほの花に聞きたいこともある。
「…なぁ、抵抗しねぇの?」
先ほどまでは抵抗していたというのに今は無抵抗な上に無表情でこちらを見つめてくるのだから。
そう聞けばほの花は視線を彷徨わせた後に俺を見上げた。
「…師匠、命令ですか?」
その言葉に俺は絶望した。
コイツはこの行為を感情的なものではなく、ただ性欲処理によるものだと思っているのだ。
確かに最近じゃ、コイツ以外勃たなくて本当に難儀をした。
だが、今ここで押し倒しているのは自分の意志だ。
師弟関係に戻れなくてもいい。
それでもお前が欲しい。
それなのにほの花は虚ろな目で命令かと聞いてくる。
お前がそういうことならそれでいい。
それなら言うこと聞くんだろ?
「…ああ、師匠の性欲処理も立派な継子の仕事だろ?付き合えよ。」
「…承知しました。満足させられなければ申し訳ありません。」
「そうなりゃ何度でも付き合ってもらうまでだ。」
地獄への道を自ら突き進む。
これが本当の地獄絵図なのかもしれない。