第34章 世界で一番大切な"師匠"※
「そうですか。優しい客ばかりではないですよね。お気持ち拝察します。」
「いえ…ですが、秋元様がお優しい殿方で良かったです。救われました。ありがとうございます。」
詩乃との世間話を始めてどれくらい経っただろうか。
だいぶ打ち解けたようなので、少し踏み込んだ質問をしてみた。
「何か最近、店で変わったことはありませんか?」
「え…?お店で…ですか?いえ、特に感じませんが…。特に良くしていただいております。ああ、でも…」
「何か…?」
「…いえ…お客様に言うようなことではありませんが、最近花街全体で行方不明になる人が多いんだとか…」
行方不明。
…ということは鬼が動き始めているということ。
しかし、それ以上の深いことを初めて会った俺に言えるわけもないかと思い、「そうなんですね」と言い、深く突っ込むのはやめることにした。
あまりに時期尚早だ。
「…では、そろそろ…。」
そう言うと、俺は詩乃の腕を優しく引っ張り腕に抱いた。
細く華奢な体が腕に収まると布団の上にその体を優しく横たえた。
「…詩乃、いいですか?」
「はい。秋元様。」
あとはとりあえず適当に善がらせてから抱いて今日は帰ろう。
俺は詩乃に覆い被さると妖艶な紅がさされている唇に口付けた。
その瞬間、思い浮かんだのはまたもやほの花。
やめろ、邪魔するな。
寝ているお前に口付けたのは悪かったから。もうしないから邪魔するな。
「…詩乃、舌を出して。」
おずおずと小さな舌を差し出してきたのでそれを絡ませると自分のそれと絡ませ合い、着物の上から体を弄ってやる。
細く華奢な体はほの花より肉付きは良くない。いや、アイツも細いくせに出るとこ出ていやがるから…って俺はなぜまたほの花なんだ。
目の前にいるのはよく知りもしない女。
今日はコイツを抱くことが俺の仕事だ。
邪魔するな。頼むから。
何度も角度を変えて口付けるとペロリと唇を舐めてやると桃色に頬を染める詩乃。
此処数ヶ月女を抱くこともできなかった。
今日、任務とは言え漸く女を抱けると思っていたのに、またもや俺の肉棒がちっとも反応しない。
(…おいおい、嘘だろ。それは流石にまずいって…)
絶望的な事象が起きていることに俺は一人冷や汗を垂らした。