第33章 世界で一番大切な"継子"※
だけど、俺は今呆気に取られている。
「雑用でも何でもやります!!」なんて聴こえて来たからそれを容認してやったのはつい先程のこと。
俺の顔を見るなりバケモノを見たかのように恐れ慄き、地面に頭を擦り付けて土下座をし出したのだ。
いや、するか?普通…女だぞ?
確かに俺はコイツの師匠で、上官だ。
それなのに隊服や顔が汚れるのも厭わずに地面に這いつくばるように頭をつけるほの花にため息を吐いて目の前に屈んでやった。
「…お前なぁ、顔上げろ…。怒ってねぇから。」
「え??本当ですか?!」
怒ってないと分かるや否や勢いよく顔を上げたほの花の顔は額が赤くなってしまっているし、土だらけ。
よく見たら少しだけ血が滲んでいる。
「良かったぁ」だなんて言ってるけどちっとも良くない。
前髪を避けて土を払ってやると照れ臭そうに笑うほの花。
顔の心配など全くしていなかったのだろう。
「あーあー、血が滲んでんじゃねぇかよ。任務でもねぇのに怪我すんな。馬鹿。」
「大丈夫です!全く痛くありません!」
急に背筋を正して立ち上がって再び頭を下げるほの花に仕方なく俺も立ち上がった。
「改めまして…昨日はすみませんでした。師匠に向かって不満をぶつけるなんて弟子として不甲斐ないです。何でもやります!荷物持ちでも何でも!初心に戻って頑張るのでよろしくお願いします!」
あくまで弟子として振る舞うほの花にモヤつきはするけど、寝ているコイツに口づけをしてしまった罪悪感が強くて弟子としてでも普通に接してくれることに心底ホッとした。
恋人のことがまだ忘れられないだろうし、師匠にうっかり口付けられたなんて知ったら気に病むに違いない。
コイツのことだから嫁達に気を遣って、此処を出ていくだなんてこともあり得る。
それだけは避けたい。
弟子としてでも良いからほの花を手放したくなかった。
「…良い心がけだな、ほの花。じゃあ肩でも揉んでもらうかね。」
「はい!師匠!肩揉みですね!やらせて頂きます!」
隣にいるのは俺の継子
大切な継子だ