第7章 君は陽だまり
目が覚めると見慣れた天井…
ではなく、宇髄さんの顔。
「……え?」
「おー、やっと起きたか。」
見下ろされるその姿は隊服のまま。
ということはまだ夜ではない。
そして頭の下に感じるのは枕ではない。程よく硬いそれは畳でもない。
どう考えても人肉の感覚。そして見上げる先に宇髄さんの顔。
猛烈な速度で頭の中で情報処理がされていくのだが、最後まで処理しきれないままに私の心が爆発寸前だったため、体が勝手にそこから飛び起きると壁に向かって全速力で走った。
それはもう私ができる最高速度で。
「んな、え、は?え、ちょ、ど、ど、ど、どゆ、こ…?!え?!何?!何ですか?!え、ど、どこ?!あれ?!」
「おーい、とりあえず落ち着け。そして逃げんな。こっちへ来い。」
「え、だ、な、う、宇髄さん?え、へ?!」
「わーった、わーった!説明するからとりあえずそこに一旦座れ。」
呆れたようにそう言われるのでずるずると壁に背中をつけたまま座り込む。
"落ち着け"だなんて私には無理だ。
目が覚めたら自分の部屋どころか、此処は恐らく宇髄さんの部屋。
布団に寝かされてるならまだしも、私の頭の下には間違いなく宇髄さんの足があった。
俗に言う…ひ、膝枕…?!
いや、そんなことを継子にするの?この人?!
いや、百歩譲ってしたとして、こんなところをあの三人の奥様たちに見られてないだろうか。
もう頭が沸騰寸前だ。
「…お前、真田清貴っつー男と会ったことは覚えてるだろ?」
「…!!あ、は、はい!あ、ああああ!そ、そうだ…、いやぁぁあ…そうだぁあ…ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。」
「…もう思い出したのか、早ぇな。おい。」
忘れてたなんてことはない。
今の状況に気を取られたことで、すっかり記憶が薄れていただけ。
手で顔を覆って恥ずかしさを隠しているが、そんなことでは収まりきらないほどの羞恥心が身体中を駆け巡り、そのまま私は土下座した。