第30章 "初めて"をください※
結局、宇髄さんを起こしてしまって何の意味もなかった?と思ったが、溜まっていた欲は放出できたようですっきりとした表情の彼がこちらを見ているので苦笑いを返す。
「…あ、いや…、天元が…、デきなくて溜まってる、かな?と思って。面と向かって言うのは恥ずかしいから寝てる間に済ましちゃおうと思ったけど…失敗しちゃった…。」
「そういうことかよ。出来たらほの花から「抜いてあげようか?」って言われてぇな。今度は聞いてくれよ。」
ニヤニヤしながらそんなことを言ってくる宇髄さんだけど、流石に恥ずかしすぎて無理だ。
しかし、結局起こしてしまったのであれば、起きるのを待ってからすればよかったのかもしれない。
「つ、次は起きるの待ってる…!」
「俺さ、女に寝込み襲われたの初めてだわ。初めてがほの花なんて派手に最高だな。」
反省をしつつ、彼の鼓動を聞いていると衝撃の事実にうっかり微睡んでいた意識が覚醒した。
「…へ…?」
「へ?って…。女に寝込み襲われたの初めてって言ってんの。なかなか良いな。またやってくれよ。」
私は宇髄さんを絶倫柱だなんて揶揄したことはあっても、別にスケコマシだと思ったことはない。だけども、大体のことは経験済みの大人な男性という想像が先行して、こんなことは勿論されたことがあると思っていた。
それなのに"初めて''と言われて、全身が震えて恥ずかしくてたまらなくなった。
「…へ、え、…、は、はじ、めて…?」
「おう。初めてだぜ?」
…ということは私がしたことはだいぶ普通でないということで、ひょっとしたら…痴女がするような…こと?
その瞬間、血の気がすぅ…と引いていった気がした。
う、嘘でしょ?
私、実はすごいことしてしまった…ということ?
「……天元、私…土に還りたい。」
「還すか。此処にいろ。」
「あー…いや、もう…本当に…色々ごめんなさい。」
「何でよ?ほの花は俺の初めてもらって嬉しくねぇの?」
意識は自分がしてしまったとんでもない事実にばかり行っていて、宇髄さんに言われるまで彼の初めてをもらったことに関して考えもしなかった。
でも、よく考えたら宇髄さんの初めてはもう殆ど売り切れてしまっていたのは事実で、柔らかく微笑む彼が私を射抜くと勝手に頬が緩んでしまった。