第29章 停戦協定※
翌日、私の体は解毒剤のおかげですっかり良くなっていて、ほんの少しの目眩が残っているのみ。
我ながら調合はドンピシャだったようで、少しだけ誇らしい。
それなのに…
「駄目だ。まだ寝てろ。」
「何でぇえええ!!熱ないじゃん!酷いっ!」
「目眩があるんだろうが。」
「ほんの少しだよ!起きた時、ちょっとクラッとしただけ!」
「うるせぇ!!こっちはそのほんの少しが心配でたまんねぇんだわ!!寝てろ。」
起き上がる時、少しだけフラついてしまって、宇髄さんが抱き止めてくれたのが運の尽きだ。
熱はないから意気揚々と部屋を出ようとしていたところを布団に戻されてしまった。
「…本当に大丈夫なのにぃ…。お腹すいた…みんなとごはん食べたい…。」
「飯は連れて行ってやるからそれまで寝てろ。勝手に出歩くなよ。今は安静にしてるんだ。」
宇髄さんが心配性なのは前からだけど、今回は体に毒を喰らっているのだから安静にしてなければいけないのは分かる…。
分かるけど、それ以外の症状は無いので、寝ているだけなんて物凄く"暇"なのだ。
外に出かけられなくても、せめて家の中では自由に動き回りたい。
それなのに私を布団に寝かせると、出て行ってしまった宇髄さんの背中を不満げに見つめる。
「…天元のけーち…、おたんこなす…。もう大丈夫なのに…。」
小さな声で漏れ出た不満はもはや悪口。
一緒に眠っていた布団は彼がいないだけでやけに広く感じるし、温もりがなくなっただけで寒く感じる。
目を閉じて宇髄さんの匂いを嗅ぎながら眠りにつこうとしても、前日寝過ぎた私は全くと言って眠くない。
流石に寝れない。
ゆっくりと起き上がると、布団に座り込み脚を抱えた。
昨日は怒りのあまり瑠璃さんを責め立ててしまったけど、彼女は大丈夫だろうか。
宇髄さん達は陰湿じゃないし、正宗たちもいるから私のことで酷い仕打ちを受けてはいないと思うけど、きっと居心地が悪いことだろう。
私ならすぐにでも出て行きたいと思うところ、新しい膝掛けを買ってこいだなんて酷いことを言ってしまった。
もう元には戻らないのは悲しいけど、彼女とちゃんと仲直りをしたい。
でも、そんなことを言ったらまた怒らせてしまうだろうか。