第26章 君の居ない時間※
「ほの花…っ、ほの花…!!」
「あ、っあっ!あああっ!て、んげん…!」
ほの花を心底愛しているのに伝わっている気がしない。
名前を呼ぶことで気づかないフリをしているが、言い知れぬ恐怖を感じている。
何故なのかは分からない。
ただ好きなのに伝わっていない気がする。
そばにいると言われても…
信用できない。
それでも離れられない。
絶対に離さない。
いつもよりもねっとりとした情交をしているからか余計に感じる。
俺を見つめるほの花が泣きそうだから。
泣きそうな顔をして笑うから怖い。
いつもみたいに欲に任せてお互い求め合う情交であれば気付かない。
何を考えてる?と気になって仕方ない。
それでも体は正直なもので蜜路を往復すれば刺激によりどんどんと昇り詰めていくのに、この行為を終わらせることが怖い。
これが終わりではない。
終わらせないと思っているのに何故此処まで恐怖心を感じるのか分からない。
分からないから怖いのだ。
ゆっくりと抽送してはいても気持ちいいには変わりないのだから全身に冷や汗が伝っていく。
「ほの花…っ!そろそろ、出すぞ…。」
「う、ん…。てん、げん…?」
「…ん?」
「口づけ、して…。」
甘えるようにそう言われれば吸い寄せられるように口付ける。
体中に付いている自分の所有印だけが自分たちの唯一の繋がりのようにも感じてしまい、心の中はとても虚しい状態なのに勝手に昇り詰めて快楽への道筋を辿ってしまう。
「…だ、いすき…。」
「ん…。俺も、愛してる。」
言葉だけで繋がっているようだった。
ほの花との情交で初めてこんなに虚しく感じた。
万が一、この恐怖が本物で彼女を失ってしまうならばその前に最後の賭けに出てしまおうか…なんて一瞬過ぎったがなけなしの理性が働いた。
膨れ上がった屹立が限界を感じると、蜜路から取り出すとほの花の腹部に白い飛沫を放った。
「っ、はぁ…ハァ…。…あっぶね…。」
「…?天元?」
「…何でもねぇ。大丈夫か?」
「…うん?」
一瞬、中に出してしまおうかと本気で思った。
それが繋ぎ止める最後の手段だと感じてしまったからだ。