第24章 情欲は無限大※
よく見れば部屋の中はあちこちに精液が飛び散っていて、催淫状態と言うのが自分が思っているよりも遥かに凄惨なのだと言うことが分かり背筋が凍った。
「…誰だ、入るなと言ったはずだ…」
此方を見ずにそう呟く彼は今までで見たことのないほど憔悴している。
見ていられなかった私は襖を閉めると座り込んでいる宇髄さんに抱きついた。
「…天元…、大丈夫?遅くなってごめんね?」
「…ほの花?やべ、…ほの花の幻影が見えるようになってきちまった…。」
「ッ…天元っ!しっかりして!!私だよ!本物!!」
抱きついているのに虚ろな目で私を見る彼の頬を両手でパンと叩いて目を合わせる。
すると、漸く私のよく知る宇髄さんの顔つきに戻って目を見開いた。
「…は?…本物?ちょ、…待て。帰れ。ほの花。頼む。帰ってくれ。な?」
せっかく来たのに抱きついていた体を遠ざけるように離すと再び背を向けてしまった。
「…何で?私、天元に会いたくて、きたんだよ…?何もできないかもしれないけど…此処にいたら…」
「駄目だっつってんだろ!!犯されてぇのか!?」
急に大きな声で怒鳴られた私はビクンと肩を竦ませた。彼にこんな風に本気で怒鳴られることなんて殆どない。
いつも優しくて結局は諭すように話してくれるから。
それなのに背を向けたまま此方を見ようともしない宇髄さんの姿に悲しくなってきた。
でも、私だってこんな状態の彼を見て黙って帰るわけにはいかない。
薬師として何かできるかも…と思ってきたけど、できないと言うことが直前でわかってしまい、絶望としていた。
だったら恋人としてならできることがあるよね?
いま、あなたが言ってくれたよね?
私は意を決して彼の背中に再び抱きついた。
「な、ッ!帰れって言ってんのがわかんねぇのか?俺はこんな状態だし、お前が此処にいたら強姦みたいなことしちまう…から。頼むから帰れ。俺はお前を傷つけたくない。愛してる。だから帰ってくれ。」
「いや!!愛してるから帰らない!!」
「ほの花…、頼むって…。お前の声だけで俺どうにかなっちまいそうなんだって…。な?いい子だから…。」
自分の欲を抑えて極力優しく諭そうとしてくれている宇髄さんの想いを無視するかのように私は彼に思いっきり口づけをした。