第4章 病魔 前編
「……こんな処に俺を呼び出して、何の用だ」
棘を纏った声をかければ、「其れ」はゆっくりとふり返った。
あの日みた紅と同じ色彩の瞳をした黒猫が、こちらを睨みつけるように見据えている。
『彼女も一緒に、と伝えた筈だろう』
その眼に不快感を滲ませ、その黒猫は口にする。
魔女が実在するこの世界においても、口を利く猫は見聞きしたことはなかった。
………けれどそれはさほど重要ではない。
「生憎と俺は慎重だからな。
素生と目的を知らないあんたに、主様を引き合せる訳ないだろう」
ニヤリと唇を曲げる。すると彼は。