第1章 はじまりの夜
駅へと続く路を急ぎながら、祖母のことを思考に載せる。
(おばあちゃん………、)
ヴァリスにとって、祖母は母であり、姉であり、何よりも大切な家族だった。
(でも、どうしてさっきは………、)
あの日の母さんと同じ眼をしていたのだろう。
ふれた温もりが何かを隠そうとしていたように感じて、
信号待ちで止まった直後、みずからの指で煌めく指輪を見下ろす。
キラリと陽光を反射するそれは、
母が亡くなった後にヴァリスが所有することを許された品でもあった。
(父さん、母さん、………おばあちゃん)
三人がみせたら様々な表情をひもときながら信号を渡る。
そして近道をしようと、人通りの少ない細い路地へと入った時。