第3章 捻れた現実
「だから……なぜ主様を………!」
ふいに鋭い声音をとらえて、ぼんやりと瞼をひらく。
「んんぅ………。」
ほんやりとしたまま起き上がり、その声に彼らがふり向く。
「んもぉ……ハウレスさん、主様が起きちゃったじゃないっすか」
すこしだけ咎めるように呟くアモン。
彼女が目覚めたことで、彼の瞳がわずかに和らいだ。
「申し訳ございません、主様。煩かったですよね」
胸に手をあて謝る彼に、「大丈夫よ」と微笑って見せる。
「いくぞ、アモン」
そう言って彼の背を押しやるハウレスに、彼女は慌てて告げる。
「私が我儘を言ったの! だからアモンを怒らないで」
その腕に指をかける。
ゆれる瞳のなかで、一抹の冷たさが過ぎった。
「? ハウレス……?」
とまどう声に、はっとしたようにその瞳が冴え渡る。
「いえ、何でもございません」
何処かぎこちなく笑んで見せると、ふいに響いた叩扉。
「どうぞ」
声をかけると、入って来たそのひとは。
「失礼いたします」
ティーセットをのせた盆を携えたベリアンだった。
「どうしたの?」
ロードナイトの瞳が、すこしばかり柔らかく和む。それからふたりの執事をとらえた。
「ハウレスくん、………アモンくん。
少しの間だけ、部屋の外で待っていていただけますか」
「! わかりました」
その瞳からなにかを見止めたふたりは、静かに一礼する。
「主様、俺達は一旦失礼しますね」
「主様、今日は楽しかったっす。
——じゃあ、………また」
「うん、また後でね」
微笑んで見送る。それからベリアンを見上げた。