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焦がれた恋情☩こころ☩に蜂蜜を【あくねこ長編】

第3章 捻れた現実


同刻。彼女の私室にて。



「よっ……と」
部屋の扉をあけ、寝台へと彼女を下ろす。



「すぅ、………すぅ」

眠ったままのヴァリスの髪を撫でる。

そのひかりは柔らかく解けていて、優しい瞳で彼女を見下ろしていた。



「おやすみなさいっす……ヴァリス様」

ぽん、ぽん、と頭に軽く手を打ち付ける。

さっと身を翻すと、くん、とシャツが引かれた。




「っ………。」

彼女が、シャツの裾を握りしめている。

アモンの眼には、心做しかその表情は寂しげに映った。



「主様、………主様。離してくださいっす」

そう呟いても、その手の力は抜け落ちなかった。

ふたたび伝いはじめた雫を、指先でそっと受け止める。




「しょーがない御方っすね」

諦めて、その傍らに寄り添う。

けれどその言葉とは裏腹に、そのおもては優しく微笑っていた。



「おやすみ……主様」
額に口付ける。温かく滲んだ、心臓を感じながら。
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