第3章 捻れた現実
「主様……。」
その笑顔から、どうしても目を逸らせない。
優しい微笑に魅せられて、額に唇を近づけ——。
「あーーーっ! ローズくん! 離れなよ、………離れろ!」
………ようとしたところで、ラムリに引き離された。
彼女を奪われ、さすがのアモンも唇を尖らせる。
「もぉ……。ラムリは無粋っすね。そういうとこっすよ」
「さらっと無粋って言わないでよね」
その一言にすこしだけ気を害したようで、その瞳がわずかに冷える。
それから彼女をみつめた。
「主様も、嫌なら嫌って言わないと駄目ですからね」
「主様、オレに近づかれるの、嫌じゃないっすよね?」
ふたりの執事に半ば迫られるように問われ、とまどったようにその瞳がゆれる。
「えっ……あのね、」
まん丸に瞠目して困っていると、彼らの瞳がおかしそうに和む。
「なーんて。からかってすみませんっす。
半分冗談なんで、そんなに慌てないでください」
「もう……!」
熱くなった頬をもて余し、ふいとそっぽを向くヴァリス。
その仕草はあまりに愛らしく、その笑みがさらに深まった。