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焦がれた恋情☩こころ☩に蜂蜜を【あくねこ長編】

第3章 捻れた現実


「お眠りなさい    無垢なるままで

 月の加護を    その身に宿せば

 千の夜を越え   浄われていく



 お生きなさい   強く気高く

 星の檻を     腕に抱けば

 黒き想いは    霧散するだろう




 あなたは運命、あなたは定め

 陽の祝福を     賜る彼女は

 永遠の名のもとに  紡ぎ手となるでしょう」


余韻を残し消えゆく歌声。繙くは温かな感情か。それとも。



(いいえ……駄目よ、ヴァリス)

想いを解いたその先を危惧して、みずからに説き伏せる。



(私は、あの日々を憎んではいけないの)

憎むということは、

父さんを——身を呈して守ってくれた母さんの献身を否定することなんだよ?




軋む胸の内を散らして、瞳を伏せる。




それでも、みずからをみつめる父の眼が、

貼り付いたように笑いかける母のおもてが、未だ脳裏で映し出されていて………。
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