第2章 主人として
「私も……ずっと貴方たちと一緒よ」
滲む瞳のまま、心から微笑いかける。
母も、『あの日』からずっと時をともにしてきたマリスと祖母でさえ、
「ずっと一緒」だという約束は交わしていなかったのだ。
だからこそ嬉しくて、………嬉しくて。
「っ………!」
たまらなくなって、気づけば抱き寄せていた。
息を呑む気配がして、彼女がナックを仰ぎ見る。
「ナッ……ク?」
驚いて途切れる声。
その声にはっとした彼は、慌てて腕のなかから彼女を解放した。
「も、申し訳ごさいません」
そむけた耳がほのかに染まっている。そんな彼のさまに、知らず微笑んだ。
「ナックくん、先程のことは不問といたしましょう」
穏やかで、けれどわずかに冷たさを纏った声。
自分を抱きしめたことを指しているのだと気づき、そっと彼の腕に指をかけた。
「ベリアン。私は大丈夫だから、そんなに怒らないで」
「主様……。」
微笑う彼女にその瞳がゆれる。そこで初めて、己の醜い感情を思い知った。