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焦がれた恋情☩こころ☩に蜂蜜を【あくねこ長編】

第2章 主人として


「ラムリくん、………それにナックくん」



「なにをしていたの?」
微笑みを返しつつ問うと、ラムリの瞳が悪戯っぽく煌めいた。



「チェスです。………あ、そうだ!

主様ぁ、一緒にナックをこてんぱんにしちゃいましょう♪」

腕をとった彼が笑う。

突然触れあった手にとまどっていると、ナックがふたりを引き離した。



「こらラムリ、主様を困らせてはいけません」

途端に、大きなグリーントルマリンの瞳が不快さに淀む。



「はぁ? 勝ち逃げなんて、ボクが許すと思う?」

怒ったように、少し見下しているように。

不愉快そうに見やる眼差しに、彼もまた棘を宿した。



「人聞きの悪いですね。——そもそも、

主様を楽しませたいからと、私に教えてほしいと言ってきたのは貴方でしょう」



「ちょっ……なんでバラすのさ!?」
怒るラムリの頬が、ほんのりと染まっている。



「そもそも、いつだって貴方は————。」



「ふふ………っ」

白熱する応酬に、思わず笑みが零れた。

そのままくすくすと笑っていると、怒りを鎮めたナックが呟く。



「主様、そんなに笑わないでください」

その頬がわずかな熱を帯びる。

すっかり毒を抜かれた様子のふたりを見つめた。



「ご、ごめんなさい。馬鹿にしている訳じゃないよ」

コト……と盤上のポーンをつまむ。

唇は笑みを描き、その瞳は柔きひかりを宿した。
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