第2章 主人として
朝食を食べ終えた、その数時間後。彼女を連れて、屋敷の廊下を進む。
はじめて目にする古風な部屋の一つひとつに、彼女は瞳を煌めかせた。
みた者を圧倒させる、鮮烈な存在。
そのなかに、子供のような無邪気さと、澄み渡るように清らな内面を見止めた。
「もおおおぉ……!」
シッティングルームから聞こえる、笑い声。
「ラムリくんでしょうか。………主様、行ってみましょう」
「うん」
叩扉をすれば、「どうぞ」と穏やかな声がした。
「失礼いたします」
静かな靴の音とともに、足を踏み入れると。
「こんにちは、主様♪」
やや癖のある黒曜に、紅紫(ダリアヴィオ)のインナーカラーの入った髪。
ふわりとボアのついた上着にリボンを飾り、
指先のみが覗く袖口には華やかなフリルがあしらわれている。
子供のように小柄で、少年っぽさの漂う外見をしたそのひとは。
「ごきげんよう、主様」
薄い唇に笑みを描く。
ゆるく波うつパリスグリーンの髪の狭間で、
辰砂とラピスラズリの互い違いの双眸が柔く解けた。