第2章 主人として

｢主様、｣
ベリアンの声に、物思いから醒める。



｢ご、ごめんなさい。………何でもないの｣
気遣わしげな眼差しを向けてくる彼に笑って見せる。



(言える訳ないよ。………私のことなんて)
ちくりと罪悪感が棘となる。その感覚を押して笑えば。



｢そうでございますか｣
その笑みのなかに拒絶を見て取った彼は、そう言うしかできなくて。



｢っ………。｣
彼らの表情が曇ったことに気づいて胸が軋む。

泣きそうに困っていると、彼らも黙り込んでしまった。



(ご、ごめんなさい。でも……私、)
ロノは何も言わず、静かにカップを置いた。



｢！｣
顔を上げると、笑ったロノのおもてが映る。



｢主様、みていてください｣
カップのなかには、固く閉ざされた蕾がひとつ。



(何をするつもりなの……？)
戸惑ったように向けられる視線。そんな彼女に微笑いかけた。