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焦がれた恋情☩こころ☩に蜂蜜を【あくねこ長編】

第2章 主人として


「あまり見ないで、」
落ち着きなく身を震わせる。



「も、申し訳ありません」
謝ると、新しい肌着の袖を通す。


コルセットで絞る必要もないほどに、すんなりと細い腰の紐を編み上げていく。

その間も、その眼は心許なさげにさ迷ってしまう。




初心な女だと思われているのでしょうね、とぼんやりと考えながら。




(……早く終わりますように)

ちらと彼のおもてを窺うと、視線が交わった。

互いの双眸が戸惑いを映す。



「………?」

見返すと、急いて視線を解かれた。

紐を編み終えると、ドレスのなかに身体を押し込む。




彼女の前に回り込み、釦を留めていく。肌にふれぬよう注意しながら。




「ここへお座りください」

すべて留め終え、鏡の前に座るよう促した。

緩やかに波打つ青灰色の髪を櫛(くしけず)っていく。



さらさらとした髪から、ほのかな匂いがする。

清らかな桜と、甘い桜桃が混ざりあったような芳香だった。



(この香り……、)

桜も桃も、見頃を迎える季節はまだ先だ。

外は木枯らしの吹きはじめる秋だというのに、その身から薫る甘い匂い。
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