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焦がれた恋情☩こころ☩に蜂蜜を【あくねこ長編】

第2章 主人として


「主様、フルーレです」
叩扉の音に、慌てて夜着を正した。



「どうぞ」
リボンを結びながら応えると、静かに扉がひらく。



「失礼いたします」
現れたのは、少女と見紛うほど、整った顔立ちをした青年。



白青(しらあお)色の髪を耳の上辺りまで編み込み、

中央にブローチのついた群青色のケープを纏っている。



繊細なフリルシャツの下は同色のショートパンツで、可愛らしい膝小僧が覗いていた。



その双眸は、白青のなかに紅の光彩の入り混じる、稀有なる瞳。



(……可愛い子、)
陽に透かしたエルバアイトのように、温かく、それいて深い色彩をしていた。



「主様、俺の顔になにか付いてますか」
とまどう声にはっとする。



「ごめんなさい。綺麗な眼をしていると思ったの」
ありのままの心を口にすると、瞠目する瞳。



「あなたのほうが、ずっと美しいですよ」
視線を解きながら呟く。けれどその頬は朱を集わせていた。



「そんな……私なんて………。」

笑みをのせた唇は、美しい弧を描く。


けれど………。


その眼は凍てつくような冷たさだった。
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