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焦がれた恋情☩こころ☩に蜂蜜を【あくねこ長編】

第6章 相反☩そうはん☩感情


「…………。」


「………………。」

扉を隔てた先で、再びふたりを包み込む静寂。



(主様、もう往ったっすかね)

けれどその思考は、彼女の思いがけない行動に打ち砕かれた。



「アモン、ごめんね」



「!?」

ノブが回される。

そして部屋へと入ってきたヴァリスは、アモンの姿を見るなり駆け寄ってくる。



「あなた………その背中ッ、」

古傷だらけの肌を隠すように、うなじから右背部(背中の右側の身体の部位)、

腰背部から仙骨部(背骨から尻上部の体の部位)にかけて、

茨と黒薔薇の刺青が入れられた、少年のように華奢なその背中。



それだけでも充分痛ましいのに、先刻まで振るっていた鞭の傷がそこかしこに刻まれている。



「アモン……?」

瞠目する瞳、驚きに染まり切った声。

その姿をかき消すように、ぐっと手首を引いた。



ドク、ドクッ………と自分の鼓動が耳元で響く音を感じながら、

驚いてアモンを見上げるヴァリスと唇を重ねた。



「ん、………んんぅ、」

きつく抱き寄せて、吐息さえ吸い取るように唇を吸う。



歯列をこじ開けて小さな舌を絡め取っていく。

荒々しく口内を蹂躙するようなキスに、

自分の腕のなかの彼女の身体から力が抜け落ちていくのを感じた。



「ん、………ふぁ、」

螺旋を描くように舌先を絡め合い、甘露のような唾液を啜る。

己の手のなかのヴァリスがくたりとアモンの胸に身を預ける頃、漸く唇を解いた。



「あなたは、オレに何をされかけたか、分かっているんすか」

呻くように告げるとその唇をひらく。



「分かってるよ、でも………、」

目を逸らそうとするアモンの頬を包む儚い指。

彼の瞳の先で、一点の曇りもない紺碧色の瞳と視線がかち合った。



「あなたは、私と『同じ』に視えるの。だから………放っておけないよ」

そう言って微笑う。その瞳には自分を案じる感情の色が宿っていた。



その表情に、何の躊躇いなく触れた指の温かさに、

どうしようもなく胸のなかの混沌が膨れ上がった。
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