第7章 惑いの往く末 後編 *【🌹 、not 最終行為】
「何がっすか。今だってこうしてなぞるだけで、そんなに感じてるじゃないっすか」
「ああぁっ………駄目っ…… …!」
濡れた布を貼り付けるようにぐにぐにと捏ねられて、とうとう涙が溢れた。
「ヴァリス様?」
急に静かになった彼女の様子にアモンも気づいたようだった。
ヴァリスの顔をのぞき込み、滲んだ瞳を見止め衝撃を受けたらしい。
「こめんなさいっす」
伝う涙を優しい指で拭いながら、ふわりとガウンを肩に着せかけてくれる。
その所作があまりにも優しく、自分をこれ以上怖がらせないよう細心の注意を払った手つきに、
彼に誤解を抱かせたのだと瞬時に悟る。
「アモン、私———、」
けれどその声の続きは彼自身によって阻まれた。
「本当に、ごめんなさいっす。そこまで嫌がられていると気づかなくて………、
少しはオレのこともみてくれるかもと思ってた自分が嗤えてきますよ」
「アモン………ッ」
(違う……。嫌な訳では、なかったのに………っ)
ガウンの合わせを押さえながら彼の名を口にしかけど、言葉は咽喉の奥で潰えてしまう。
アモンの表情が、あまりにも痛々しいものだったから。
「オレ………ルカスさんを呼んできますねっ」
強いて絞り出したような明るく声音を口にしながら、逃げるように彼が出ていった。