第7章 惑いの往く末 後編 *【🌹 、not 最終行為】
ちりちりと吸われた余韻が残る首筋を、満足げな彼の視線から隠すように覆う。
真っ赤になってぷるぷると身を震わせる私をみつめ、その唇をひらいた。
「このくらいで真っ赤になってたら、先が思いやられるっすよ」
その口調は極限まで優しく、彼の本来の内面が滲み出るようなのに、何処か揶揄の棘も含んでいた。
恥じらいと悔しさに潤んだ瞳で睨み付ければ、彼はますます悪戯っぽく笑みを深める。
「からかわないでっ」
ふいと勢いよくそっぽを向けば、「違うっすよ」とその声音が低くなる。
「え……?」
驚いておもてを見上げれば、先刻までの甘やかな光をまるで嘘のように消し去った瞳と視線がかち合う。
いつになく真剣な瞳に笑みを消した表情。
スピネルの瞳は何処までも深い色合いを帯び、
何だか心の奥底まで見透かされそうに感じながらも、視線を解かずにいると。
「(どうして……そんな眼をするの………?)」
瞠目する瞳に、アモンに再度指を伸ばしてくる。
その指が肩に触れかけた刹那、びくっと身を震わせる私をみて、押し殺したような声で呻いた。
「………ベリアンさんはよくて、オレはだめなんですか」
「………!?」
バッとおもてをあげると、何処か棘の滲む瞳と視線が結ぶ。
その瞳の先で、アモンは吐き捨てるような口調で告げた。
「グロバナー家本邸での同盟締結から帰った夜、ベリアンさんは主様の部屋まで往ったすよね。
そして、真夜中になるまで出てこなかった」
彼の指摘に俯いてしまうヴァリスを引き寄せて、再度その腕のなかに閉じ込める。
驚いたまま固まってしまうその耳元に唇が近づいてきて、優しいキスを落とす。