第6章 惑いの往く末 前編
ルカスの手を借りながら馬車から降り立つと、彼女を取り囲むように四人が立つ。
懐の武器を取り出すと、天使たちが一斉に彼らのほうへと飛び立った。
「主様、私達の悪魔の力の解放を……!」
ベリアンの声に厳かな呪文を口にする。
「『来たれ。闇の盟友よ。我は汝を召喚する』。
『ここに悪魔との契約により、悪魔執事の力を解放せよ』」
「ありがとうございます、主様」
各々の武器をしっかりと握りしめ、厳しい瞳で天使たちを見据えた。
『死になさい。命のために』
色も光も宿さない、底なし沼のような瞳。
造り物のような翼で羽ばたきながら、その指がヴァリスへと伸ばされ………。
「おっと! 穢れた手で、主様に触れようとしないでください」
くふふ……! 歪な笑みを浮かべながら、手にしたナイフでその翼を切り裂く。
ザク、ザクッ。バラ、………バラ。
壊れゆく翼、砕け散る無機質な肉体。
ラトのナイフが宙を裂く度に、次々と倒れていく天使たち。
バク転をして後方に飛びのくと、その背にラムリの背が重なる。
「ラトっち……! 背中は任せて!」
ラムリの手にしたナイフが、月光を映しキラリと光った。
鉤爪のように曲がったその刃に、消えてしまいそうな月が描かれる。
とん、と背を合わせ、二人同時に天使たちに向かって靴の音を響かせる。
その瞳は彼らへの怒りと憎しみに染まっており、的確にその心臓を貫いていく。