第6章 惑いの往く末 前編
『死に、なさ………、………死……………。』
やがて全ての天使たちを殲滅し終えた二人は、彼女のほうへと歩み寄ってくる。
「ご無事か、主様?」
ピンクトルマリンの瞳がヴァリスを映す。
何とか微笑を浮かべながら、差し伸べられた指を取りその唇をひらく。
「平気よ」
彼の手を借りて立ち上がると、ユーディアライトの瞳が仄かな動揺を映す。
(あんたが、主様……?)
ゆらめく瞳に気づいたバスティンは、思わず問いかける。
「どうかしたのか、ハナマルさん?」
「いや、………なんて言うか、………噂の『主様』が、
まさかそんなに綺麗な人だけ思わなかったから驚いたんだよねぇ」
いつもの飄々とした笑みを浮かべて見せる。
すぅ………っと感情のひかりを消し去った瞳をハナマルと呼ばれたその男に向ければ、
その瞳が霞のようなヴェールを纏う。
(やっぱり————、)
似すぎている。
髪色も瞳の色も、纏う彩色は何一つ同一ではないのに、
身のこなしと気の強そうな瞳が、ハナマルにある人物を思い起こさせた。