第5章 病魔 後編 *【🫖】
「貴女を、もっとみせてください」
その囁きとともに、長い指がシュミーズのリボンにふれる。
キスに夢中になっていた彼女は、ベリアンのその言葉に一瞬にして我に返った。
「あ、……駄目………。」
思わずその手にみずからのそれを重ねると、その手をとられて口付けられる。
ちゅ、と手首に唇を押し当て、薄い唇が美しい弧を描いた。
「では、今はこのまま触れましょう」
ベリアンは薄いリンネルの布地の下で、ふっくらと盛り上がっている胸の谷間をみつめる。
薄いリンネルの生地越しに、真っ白な肌の色と
うっすらと中心で色づいているところが透けて見えてしまっていた。
熱い視線がほっそりとした身体の線をたどり、ヴァリスはどうしていいかわからずに身を固くする。
胸を隠そうとした指をすばやく囚え、
リネンのシーツの上に押し付けられると、彼女はわずかに身動ぐ。
「いや、………そんなに見ないで」
身を震わせたことで、豊かな胸がふるりと震える。
「なぜ隠すのですか」
指を絡めて、神への祈りを捧げるように組み合わせた。
「だって、……恥ずかしいの……こんな、こと………。」
指を解きたくても、彼の指は離れることを許さない。
繋いだ指先にさらに力を込めながら、
ベリアンはヴァリスの上に覆い被さり、脚の間に胴体を割り込んできた。
「あ………。」
長い青灰色の髪が上質なシーツの上に広がる。
天井の模様が視界に広がった瞬間、身体に重みを感じた。
のしかかってきた彼を見上げると、ロードナイトの双眸がヴァリスを愛おしげにみつめていた。
「……貴女のこのような姿をみられるなんて」
満たされたような声に、ますます羞恥で身体が火照ってしまう。
月灯りを反射して、紅く煌めくその瞳。
情欲を映した宝石のような輝きに吸い込まれてしまいそうだった。
ベリアンがわずかに動いて、さらに身体が密着した。
仕立ての良い魔導服越しに、普段は感じることのできない肋骨の感触や、
強く打ち鳴らしている生者の証を感じて、胸のなかに温もりが広がっていく。