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焦がれた恋情☩こころ☩に蜂蜜を【あくねこ長編】

第5章 病魔 後編 *【🫖】


「ん………。」

蒼い月灯りが降り注ぐ室内で、唇を触れあわせる。



ちゅ、……ちゅ………と小鳥が啄むような音を立てながら、

幾度となく重なり、つたない仕草で彼の唇に応えた。



釦を外していく指はわずかに震えていて、彼のこころを悟る。



(貴方も……緊張しているの………?)

咲きそめた花びらを、そっとかき分けるごとく合わせがひらかれる。



コルセットは付けていなかったから、ドレスを脱がされると、

薄いリンネルのシュミーズ越しに、年相応に豊かに山を描くふたつのふくらみが見えてしまう。



恥ずかしさを持て余し覆い隠すと、大きな手が重なった。



「貴女をみせてください」

包むでも外させるでもなく、ただ重ねあわせたてのひら。

温かな手が指を囚え、きゅっ……と繋ぎ合わせるように絡まる。



そっと包み込まれていく温もりに、おずおずと握り返した。



「だ……って、恥ずかし、………ひぅっ」

顔をそむけた耳朶に熱い吐息がふれる。

ぬるりとした感触を耳孔に感じたかと思えば、濡れた音を立てながら舌を挿し込まれた。



耳殻の輪郭をたどるように舐られ、細い肩が揺れる。



「羞恥は私が溶かして差し上げましょう」

頑なに手を外さないヴァリスを見下ろし、その耳をかすめた声。

かすかにかすれたその声音に、強烈な程異性を感じたのもつかの間。



「あ、………待って、」

大きな手が胸を包み、その熱にこころがさざめく。

制止の声も聞こえぬ様子で捏ねられて、驚いて彼をみつめた。



「やっと、こちらを見てくださいましたね」

ふふ。かすかな微笑を浮かべ、その瞳が柔らかく和む。



優しく、愛おしさが融けだしたようでいて。



その一方で薄闇に包まれた室内でもはっきりととらえることができる程、

獰猛にひかる双眸を見止め、ヴァリスは思わず息を呑む。
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