第5章 病魔 後編 *【🫖】
「……私に貴女を愛する資格を与えてくださいますか」
「っ………!」
はっとしてそのおもてを振り仰ぐと、その瞳と視線がかち合う。
彼の声が、言葉が、甘い毒のように心に沁み込んでいく。
それに抗いながら、霞がかる思考を音とした。
「私で、………私なんかで、本当にいいの……?」
そしてわずかに躊躇った上で一息に告げる。
「私は貴方が思っているような女じゃないんだよ?」
見上げる瞳にゆらめく光。
もち上げたその手首に慈しむように口付けられ、みるみる頬が熱を宿した。
「貴女は御自分がどれ程我々悪魔執事の救いとなっているのか———存じておられないのです」
頬に添えられた手が、その輪郭をなぞるように撫でてくる。
おずおずと———大きな手に、みずからのそれをそっと重ねた。
「与えるよ。………私を、奪って」
膝裏に手を差し込まれ抱えられる。
それはあまりに性急な所作で、思わず彼の服にしがみついた。
花にふれるような優しさで寝台に下ろされる。心は、既に期待を打ち鳴らしていた。