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焦がれた恋情☩こころ☩に蜂蜜を【あくねこ長編】

第4章 病魔【P128 ~ 🫖*】


「ううん………、」

うとうとと、混沌へと沈みゆく意識。

その身を包む微睡みは、いつしか混濁を呼び醒ました。




一面の黒曜。見渡す限り、暗くくらく視界を塗りつぶしている。




その中心で、泣いている幼い少女がいた。

陽に透かした新雪のような、青灰色の髪。

その傷だらけの身体には、おおいに見覚えを感じた。



けれど『違う』。………その子は。



「あなた、………どうしたの」

気づけばその肩に指をかけていた。

泣いていたその子が漸くおもてを上げる。



「母、さん……?」

その顔の造りは、母リラと同一だった。

昔、祖母の書斎でみたふたりの写真と同じ、幼い頃の母そのものだった。




戸惑っていると、母その人が唇をひらく。




「どうして……一緒に死んでくれなかったの」

淀む瞳は彼女だけを映している。



訳の分からず見返すと、その指が伸びてくる。

触れた手は、氷のように冷たかった。



「思う路に進んだよ」

そう返すけれど、母は唇をかみしめた。



「おまえは逃げた。………傷つかない路へと逃げた。

また裏切られるのが怖かったのでしょう?」



「それは………っ!」

やっとの思いで口にできたのは、曖昧な肯定に等しい声。

そんな娘のさまに、そのおもてがわずかな憤りを滲ませた。



「どうして、私を選ばなかったの。どうして………、」

母の姿が歪み、そして闇に呑まれて消えていく。

ヴァリスは届かぬ指を伸ばした。
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