第1章 竹取物語
「わたしが、かぐや姫の生まれ変わり…?」
「そ。君、呪霊はずっと見えてるんじゃない?
でも君は襲われたことがない。」
「っ、」
思わず顔を俯かせる。
「その表情は図星だね。」
彼がそう言った。
心当たりしかなかった。
大好きだった父と母。
自然に囲まれた、近くには小川が流れる山奥で、友達は母が作ったぬいぐるみとたくさんの本。母は私に山を絶対に降りてはいけないと、誰とも関わっちゃいけないと、何度も何度も教えた。
それが、私を守る唯一の方法だからって。
意味がわからなかったけど、いつも優しいお母さんが、その時は怖い顔をするから、私はお母さんを喜ばせるために、言いつけに笑顔で頷いた。
父は目の前で化け物に食われた。私が5歳の時。
その5年後、今度はお母さんが食べられた。
あの日からずっと、私は一人で暮らしている。
「天の羽衣は、君の呪力を隠し、君を守ると同時に、呪物なんだ。呪物は呪霊を引き寄せる。」
『このペンダントは、あなたを守る、大切なお守り』
お母さんの声が浮かぶ。
…そういう、ことだったんだ。
「たしかに、私は、守られていました。」
なんとなく、気づいていた。
『あなたは、特別な子なの。』
あの言葉の意味を。
特別はぜんぜん、良い意味じゃなかった。
「君を丸呑みするには力は強すぎるからね。
それに耐えうる呪霊も相当な力がいる。」
ーあぁ、やっぱり。
「だから君を飲みこんだ呪霊を何なく倒した僕は
強強の最強ってわけ!」
後半は耳に入ってこなかった。
彼の言うことが本当なら。
…両親を殺したのは、わたしだ。