第1章 竹取物語
「もしもし、憂太?あ、もう着いた?うんうん、場所はとりあえず山の何処かなんだけど、ものはね、白いペンダントだ。うん、まぁ棘が呪力でわかるんじゃないかな?はーい、よろしくー」
山のどこかって、私のおうち、かな。
白いペンダント、やっぱり大事なものだったんだ、、
心の中で思っても私は何も言わず彼の電話を聞いていた。
「あれはね、一定以上君から離れてしまうと、君の呪力を隠す効力がなくなってしまうんだ。僕が助けなかったらほんと君、あのまま死んでたよ?」
「え、」
あ の ま ま 死 ん で た ?
その言葉を聞いて私の記憶の扉が一気に開いた。
畑から家に着いた時。ペンダントがないことに気づいた時にはもう遅くて。私の周りにはあの気持ち悪い化け物がいて、一瞬でそれに飲み込まれて、意識を失ったんだ。
この人が私を助けてくれた、ってことなの、かな。
「呪霊の胃の中にいてくれたから、僕が行くまで呪詛師や他の術師から守れたってのもあるんだけど」
あの化け物をこの人はジュレイと呼んだ。
私の心は、少しだけ期待をしていた。
…この人は、私の知らないことを、たくさん知ってる人かもしれない。
お兄ちゃんみたいに。世界を教えてくれる人かもしれない。
知らないうちに私の瞳は期待でいっぱいになっていた。
「…そうだね。ちょっとした、昔話をしようか。
日本で一番、古いお話を。」
得体の知らない男の人なのに、子供が物語をせがむような、そんな期待を抱いた。