第2章 寮の怪異事件
「か、かぐや姫ってどんな術式、使うんだ?」
パンダさんが気を取り直した様子で身を乗り出してくる。
「えっと、」
私が何も答えられないでいると、戻ってきた伏黒くんが私の隣に座りながらこう言った。
「こいつ、今まで山奥で一人で暮らしてたらしいんで、自分のことも何もわかってないんですよ。だから、勘弁してやってください。」
「あぁ、ごめんね。急にたくさん聞いちゃって。」
さらっと言ったその言葉は、冷たいようで、どこか優しくて──
私はなんとなく目を見張った。
「……急に詰めすぎだ、バカパンダ。」
そう言って真希さんも話を逸らしてくれた。
「いえ、こちらこそ、何も答えられなくて、すいません。」
場違いなんじゃないかと、思わず、そう返してしまう。
なにか、言えること、ないかな。
不安になっていつもの癖で胸元に手を置く。
いつもは冷たいペンダントが、今は少し温かくなっていた。
「あ、でも!
このペンダント、私のじゅ、呪力を、制御?してくれるもので。」
そういって取り出すと
みんなの中の空気が変わったような気がした。
「呪物だな。」
「…え?」
真希さんの言葉に体が固まる。
「これか、昨日棘たちが回収してきたって代物は。」
「しゃけ」
「う、うん。僕と狗巻くんが取りに行ったものだよ。
これ、なんなの?」
「俺も特級呪物は初めてみたな。
これを取り込むだけで、低級呪霊も特級に早変わりしちまう代物よ」
「いや、でもこれはあまり弱いじゅ、呪霊は取り込めないって、五条先生が…」
「じゃあ、特級が超特級になっちまうってことか。」
何も言えず、沈黙だけが流れた。
「まぁ、高専内とは言え、東京だ。
人が多い場所だから余計に注意しないとな。
変な呪霊がやってくるかもしれねぇし。」
真希さんがぶっきらぼうにそう言う。
「それって、今も?」
パンダさんがふと、窓の外を見る。
──その瞬間だった。