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呪術回戦ー八月の忌み子ー

第1章 竹取物語




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「あれ、寝ちゃったや」

呪術高専に連れて行くと決め、伊地知を呼び出して高専まで車を走らせた。あたりはもう夜になっていた。

窓に頭を預け、おとなしくなったと思ったら、夏の始めの夜の涼しさが眠気を誘ったのか、はスースーと寝息を立てていた。

自分からは何も聞かない彼女に目をやる。

泣き疲れて眠っただけなのか、主体性の無さの現れか。
それでも、こんな状況でも眠れてしまうこの子の無防備さに少し眉が下がる。



「その子が噂のあの…?」


自分のジャケットを彼女にかけると
伊地知がそう口にした。

「そ。今朝、術師が感じた呪力の持ち主。香久夜。恵と同い年。」

「今朝のはすごかったですね…。都内の術師はほぼみんな感じたんじゃないでしょうか。」
「そうだね。でも高専の管轄内で本当にラッキーだよ。僕が駆けつけられない場所だったら助けられなかった。」

呪霊からも、上層部からも。

「にしても、かぐや姫…私も半信半疑でしたが、まぁ…納得です。」


伊地知が濁すように言葉を紡ぐ。
口を薄く開けて寝ている姿は、子供そのものだけど。


「うん。宿儺を落としたのも納得する悪魔的な美しさだよね。ほんと、魔女だよ。」


かぐや姫には、男を落とす魔力があるとか言う噂があった。
あの日に生まれたってだけで皇室を狂わした美しさが復活するなんて、本当に信じられない話だが、目の前のこの子を見て、納得をせざるを得ない。




「御三家の誰かが秘密裏に匿っているだとか噂もあったけど、これをずっと隠しているのは難しいよね。僕だったら絶対見せびらかすもん。」

「……五条さん。彼女は伏黒くんと同い年と言いましたよね。」

「ははは、お前は偉いね。そう言うとこ信頼できる」


いきなり珍しく僕が褒めるから、素直に受け取れない伊地知が微妙な表情を浮かべていた。



まぁでも、後ろ盾は絶対いたはずだ。
じゃないとあの家の生活が成り立つはずがない。
自給自足はできたにしても、両親が結果死んでることから、彼らが結界術を使えたかも怪しい。


「君は誰と隠れてたのさ。」


黒い髪を耳にかける。


かぐや姫伝説。同じ時代に生まれた、うんびゃく年ぶりの特異体質。

興味が湧かないわけがない。
絶対死なせてなんか、やらないからね。
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