【テニスの王子様】Nobody else【仁王雅治】
第17章 私も好き【3月】
side.名前
「雅治くん…」
そう呼んだ瞬間、バッと顔を上げた雅治くんの顔に驚いた。
やはり泣いていたようだ。
その表情は驚いていて、目が左右に泳いでいる。
「その…テ、テニスの、調子、どうだった!?」
「………」
何も言ってくれない雅治くんに戸惑って、どもってしまう。
言い終えたと同時に、私も一緒になって目を泳ぐ。
束の間の沈黙の続く。
気まずさに耐えられない!!
そう思った瞬間。
腕をぐいっと引かれて、雅治くんに抱きしめられた。
ちょっと、君っ!
胸に顔埋めてますよ!
私は恥ずかしさから一気に赤面するが、雅治くんは意に反してぎゅうぎゅうと抱きしめてくる。
とんだ羞恥プレイだ。
「名前………本、物?」
「え、と…本物だと思う(本物?だよね、私)」
「…何で、こっちのせか…」
「えっ?」
「何でこっちにおるんじゃ?」
一度区切った言葉は、きっと“こっちの世界”と言いたかったんだと思う。
覚えてるんだ。
嬉しくなった私も、雅治くんの頭を抱きしめ返す。
そのまま背中を見れば、伝言もきちんと届いていたようだ。
「…返事」
「返事?」
「うん。私も好きって言いに来た」
神様に届いたようだ。
雅治くんにテニスをさせてくれて、ありがとうございます。