【テニスの王子様】Nobody else【仁王雅治】
第15章 もう隣にいない【2月】
side.仁王雅治
軽く走りながら、心の中で名前を想う。
名前。
俺、強くなっとった。
『もし、あっちの世界に帰って、何もかも忘れても。テニスに対する気持ちだけは忘れないでね?』
やっぱりテニスも名前も忘れんかった。
『名前のことも忘れんよ。俺は名前も連れてくき。じゃけぇ泣かんで』
名前。
今、泣いとる?
もうお前さんの涙を拭ってやれんな。
『私は行けないけど、もし雅治くんが今みたいにテニスが大好きで、一番になれたら、今度は立海が主役の漫画が出るかもしれないでしょ?』
テニスも名前も大好きじゃ。
こんなにも好いとう。
やっぱり連れてくるは無理だったようじゃな。
でも会えないのなら、せめて…
青空を見上げ、決して交わることのない世界にいる君を想う。
「約束通り俺は強くなっちゃる。じゃけぇ、ちゃんと見とってな」
春風に乗ってかきけされるこの声が、君に届くことはない。
いつも俺の隣にいた君。
その君が、もう俺の隣には存在しないからだ。