【テニスの王子様】Nobody else【仁王雅治】
第2章 奇跡の出逢い【1月】
side.名前
キレイだなぁー。
幻想的な世界に、ほうっと見とれる。
空を舞う鳥たちに、海から昇る太陽。
全部さらわれそうに感じるちょっと恐い広大な海。
どのくらいぼんやり見ていたのかは知らない。
冬の冷たい風に頬がピリピリし始めた頃。
不意に止めっぱなしの車が気になって、階段の上を見上げると、視界に飛び込んできたのはキレイな銀髪。
人の気配に気づかず驚いたのはもちろんだが、その人物が仁王雅治にあまりにも似ているから吃驚した。
芸能人ならまだしも、漫画の世界の人物が現実にいるわけがない。
頭では分かっているのに、目は彼を捉えて離れてくれそうにない。
違和感…とでもいうのだろうか?
地毛のような銀髪。
翡翠色の瞳。
常識的に考えれば作り物。
しかし彼は違う。
作り物にしては自然すぎる。
しげしげと見入ってしまう私の口から思わず出た言葉に、驚いた様子で何故名前を知っているのかと問われる。
それを聞いた私は、からわれているのか疑心暗鬼になりながらも焦って答えた。
すると今まで驚いていたような彼の表情が変わり、口角が上がっていく。
「…お前さん。どうやら本当に知っとるようじゃのう」
「へっ?」
2024年1月×日。
信じられないことに“仁王雅治”に出逢ってしまった。