【テニスの王子様】Nobody else【仁王雅治】
第12章 カルテの病名って… 【2月】
side.仁王雅治
“ピーポーピーポー”と、大きなサイレンを鳴らし走る救急車。
その中は意外と静かで、「ううっ…」と名前の苦む呻き声がよく聞こえる。
日の出前の朝方。
事件は起こった。
「ま、さはるくん…」
弱々しい声に比べ、自分の部屋着を引っ張る強い力に目が覚める。
暗闇の中でも、俺の服を掴んでいるのが名前だと分かった。
「名前っ!?」
様子がおかしくて、俺は急いで電気をつける。
「どうしたっ!?」
「お、お腹っ…痛い…」
「大丈夫かっ!?腹が痛いんかっ!?」
名前は腹を抱えて横たわっており、じっとりと脂汗をかいている。
その様子から腹痛を訴えているのだと理解した。
額を触るが熱はない。
「吐きそうか?」と問うとても首を横に振るだけで、言葉すら発せず唇を噛みしめ痛みに耐えている。
吐き気はないようだが、彼女の様子からただ事ではない。
そう判断し、俺は急いで救急車を呼んだ。
救命士が到着するまでの間。
苦しむ名前の汗を拭ってやる。
それくらいしか、俺に出来ることはなかった。