【テニスの王子様】Nobody else【仁王雅治】
第8章 側にいて?【1月】
side.名前
「名前?名前?」
「………雅治くん」
優しい声音に起こされ、薄く目を開ける。
すると心配そうな顔で、私を見つめる雅治くんがいた。
夢か…
安著の息を吐く。
「すまん。泣いとったから起こした」
「あ、うん。ありがとう」
「嫌な夢でもみたんか?」
「…雅治くんと会う前にね…怖いことがあったの。その夢」
「…大丈夫か?」
私の頬を包み込んでくれる彼の手は、私なんかが触れていいのか戸惑うほど温かいものだった。
彼の手の上に自分の手を重ね、過去を掘り返す。
あれは私が撒いた種。
自業自得の出来事だった。
私は堕胎した。
一生分、泣いたと思う。
一生分の悲しさや苦しみを味わったと思う。
どれだけ涙を流しても、心の傷は薄れることはなく、思い出しては何度でも、私を奈落の底へと突き落すのだ。
できることなら消えてしまいたい。
できることならあの子と一緒に逝きたかった。
私は、何故生きてるんだろう。
何に生かされてるんだろう。
悲しさと共に、私も消えてしまえばいいのに…