【テニスの王子様】Nobody else【仁王雅治】
第5章 この手を離さない【1月】
side.仁王雅治
「私が守ってあげる」
「へっ?」
不意に言われた言葉に驚き、歩みを止めて振り返る。
突然のことで、彼女が何を思ってそう言ったのか分からなかった。
「私が守ってあげる」
「何から?」
首を傾げる俺に、もう一度はっきりと彼女は言った。
彼女は一体何から守ってくれるというのだろうか。
その言葉の意図が分からず、聞き返す。
すると「うーん」と考え込でしまった名前。
何の考えもなしに、守ると口にしたのだろうか。
「全部。雅治くんが悲しいことから全部」
「何で名前に守られるんじゃ」
「だって、なんか悲しそうな顔しているから」
彼女に言われて気づいた。
どうやら俺は寂しいという感情を顔に出していたらしい。
「…そっか、あんがとな」
「うん」
苦笑する名前。
きっと俺の気持ちを察して、そんな表情をしているんだろう。
俺は彼女の考えをよく知っている。
人にはそれぞれ感情のコップがある。
それを溢れることなく生きていければ、無難な人生なんだろう。
彼女も俺も人の器の大きさは、人それぞれだと思っている。
花粉症のようなものだ。
口では何とでも言えるが、俺の本当の寂しさを知ることはできない。
俺の寂しさ埋めることなどできはしない。
人の感情を自分の物差しで測ろうとしない彼女は、そう思っているに違いない。
でも、それは大きな間違いだ。