【テニスの王子様】Nobody else【仁王雅治】
第5章 この手を離さない【1月】
side.仁王雅治
あの衝撃の出会いの後、休日は専ら名前と過ごすようなった。
少しでもお互いを知るため。
というよりも、俺の寂しさを埋めてくれる唯一の存在だからだ。
軽く依存していると思う。
昔は“立海の仁王雅治”というブランドものを見るような女の目や重圧が嫌いだった。
でも今は、俺を“立海の仁王雅治”と見てくれる名前の存在が嬉しい。
俺にとって名前はとても居心地のいい存在で、好きか嫌いかと問われれば、likeである。
今朝見た夢のせいで些か落ち込んでいるが、今日は彼女に会うんだ。
こんな顔していたらいかんじゃろ。
鏡越しの自分の情けない表情に苦笑した。
名前と待ち合わせた場所まで着いたはいいが、曇りのせいで未だ気分は晴れない。
「どこに行く?」と聞いてくる彼女に「どこでもよか」と曖昧に答えてしまったが、本当にどうでもよかった。
そんな俺の気分を察したのか「じゃあ適当に散歩でもしようか?」と笑顔で返してくれる名前にほっとする。
しかし名前といても考えるのは自分のことばかり。
俺は何故ここにおる?
異端者。
この世界にも、
あの世界にも、
俺の居場所はない。
負の考えがぐるぐる頭を回る。
“帰りたい”
出来るわけがないのに、また望んでしまった。