【テニスの王子様】Nobody else【仁王雅治】
第36章 長閑な昼休みの事件【6月】
side.幸村精市
屋上に入ってきた仁王は、イレギュラーな名前の存在に驚き目を見開く。
しかし、その視線はすぐに逸らされてしまう。
一体、何があったんだ?
驚き隠せない俺たちに反して、渦中の仁王は飄々とした様子で俺たちの輪の中に座り込んだ。
いやいやいや!!
何とか言えよ!!
みんなビックリしてるだろ!!
とでも言いたげな顔をして、仁王を見ていると柳生が口を開いた。
「仁王くん、そのお顔はどうされたんですか?」
「ぶつけた」
しれっと返す仁王には申し訳ないが、明らかに殴られたような痕跡を残す頬。
柳生がいくら問い詰めても、仁王は「ぶつけた」の一点張り。
「私にあなたの嘘が通用するとでも?」
「ピヨッ」
「…はぁ。とにかく冷やしに行きますよ」
「別に平気じゃ」
「だめです」
シラを切り通す仁王を強制的に立たせ、屋上を出て行こうとする2人。
すると、隣に座っていた名前が立ち上り仁王の腕を掴んだ。
「雅治くん。本当はどうしたの?」
「…何でもなか」
「…そう」
心配そうに聞く名前に対しても仁王は事情を話さない。
名前は悲しそうに微笑み、あっさり問うのを止める。
屋上を後にする2人を見送ると、どこか重々しい空気が流がれた。