第12章 過去を語る
アルナ「___そうやって、兄を見つける為に僕は旅に出て、ここに居るんです」
暗闇に響く声。
しんと静まり返ったその場は、皆ことの重さに黙ることしか出来なかった。
それは語り手であった僕もだ。
ラビ「…じゃあ、今も探してる途中なワケか?」
ひとり、空気知らずのラビが問う。
思うに、ラビは空気知らずなわけでは無く、あえて僕が悲しまないようその役を買って出たのだろう。
僕はそれに感謝しながら、答える。
アルナ「そう。だから最初教団入りを断ったんだ」
僕が頑なに逃げ回っていたのを思い出したのか、みんな納得していた。
リナリー「…私、当時にそこを…アルナの故郷を訪れたこと、あるかもしれない」
アルナ「えっ…それ本当?」
リナリーからの発言に驚き、コムイさんにチラリと目をやる。
コムイ「そうだったね。まだリナリーが幼かったし、神田君との初任務だったからよく覚えてるよ」
神田「あれか」
若干僕から遠くの方にいた神田からも声が上がる。
アルナ「…その時は、何をしに行ってたの?」
多分、僕はまだ力を使いこなせてないから"妖精"の為に行った訳ではないのだろう。
だったら何故____?
リナリー「確か、燃えた大きな屋敷の調査と…」
神田「周辺のアクマ退治だ」
…あ、そっか。
あの事件自体、もう既に奇怪現象だもんね。
あれ、でもちょっと待って…?
アルナ「神田、今アクマ退治って言った?」
神田「ああ、それが何だ」
アルナ「僕の家の周辺には、アクマが居たってこと?てことは、」
もしかして、あの事件は、じゃあ_____
コムイ「アルナくん、君のご家族の件は…アクマが関わっている可能性が高かいんだよ」
言葉を聞いた瞬間、自分でも驚く程すんなりと理解できた。
アルナ「そっか…アクマが。」
告げられた悲劇の犯人。
そして僕はそれを壊す力を持っている。
運命としか言えない、これからすべきことを見つけた。
アルナ「…僕の話は終わりです」
?「待てよ。まだ説明してない事があるだろ?」
凛と響く新たな声に皆振り返る。
アルナ「…ユラ」
ユラ「久しぶり」
そこにユラが立っていた。