第5章 桜 色 の 泪[煉獄杏寿郎]
はな潤んだ瞳で俺を見て言った。
それもそのはずだ。洗ってやろうと言いながら、俺ははなの体を堪能しているのだからな。
「怒っているのか?」
俺の問いに首を横に張った。
「ならば気持ち良いか?」
耳に口元を寄せて囁くと、小さく頷いた。
「杏寿郎様、そちらを向いても良いですか…?」
「俺も君の顔が見たい。おいで」
はなはやはり恥ずかしそうに俺に跨った。
向かい合わせに座ったはなの項をグッと引き寄せて口づける。細い腕が首に回されれば、もう止めることはできない。
「んっ…はぁ…っ…あぁっ…」
息を継ぐ間も惜しむように俺の舌を追って絡ませてくる。俺の舌を小さな口で精一杯受け止める姿がいじらしくて、深く舌を沈めた。
「今日は積極的だな」
「触れて…欲しかった」
「随分我慢させたようだな」
「ん…とっても」
「君がこんなにも俺を求めてくれるなら、たまには我慢も悪くないな」
「体の我慢はいくらだってします。でも心の我慢はもう嫌です」
「もうそんなことはさせない」
「はい…」
言葉では伝えきれない想いが涙となって瞳から溢れてきているようだった。
「落ちた涙も愛おしいな。俺の中に染み込んでしまえば良い」
瞳の端から流れた涙は俺の胸を濡らしていった。
頬を伝う涙は、桜の花弁のようだ。桃色に染まった頬に落ちた涙が頬の色を映して桜色に見える。それは美しく儚い。
「杏寿郎様を想うと、胸が苦しくなります。こんなにも傍にいるのに、もっと傍にいきたくなるのです」
「俺は誰も隙入る余地かがないほど君で満たされている。君の声も心も体も、髪の毛一本までも君が愛おしい。この涙もだ」
そっと触れる口づけをすれば、もっと深くお互いを知りたくなる。だんだんと深い口づけに変わっていって、甘い声と吐息が、湯気と混じって溶けていく。
俺とはなの舌が交わる度に鼓膜を優しく刺激する水音が響いた。
「杏寿郎…さ…ま」
「はな」
名を呼ばれる度にもっと君が欲しくなる。
背中に回した手をスルスルと乳房へと移し、優しく掴むように揉みしだく。指先で乳頭を刺激すると甘い声は一層高くなる。
「あぁっ…んっ…」
「離れるな」