第3章 懐 想 [煉獄杏寿郎]バレンタイン
「久しぶりね…杏寿郎さんの傍はやっぱり心地良い……」
私は杏寿郎さんの胸元に頬を寄せた
懐かしい、温かい香り。陽だまりの様な心地良さ
『はな…』
久しぶりのキスが照れ臭くて、思わず胸に顔を埋めたけれど、そんな優しい声で呼ばれたら、勝手に顔が上を向いてしまう。
「ん…?」
『愛らしいな…』
私の顎を手を当てて、上を向かせる
その手はお酒のせいかな?いつもより温かい
キスされる…わかっているのに、突然の様に胸がドキドキ鳴ってる
ちゅっと軽いキスから、食べられてしまうんじゃないかって程の深いキス
それから……唇を割って入ってくる舌
ほんのにお酒の味がして、大人のキスって正にこのことだ…ってぼんやり考える
「ん…ふっ…はぁ……あ…ぁ」
『その声をどれだけ聞きたかったか知っているか?』
私だって、この感触をどれだけ待ったか知っている?
「私もずっとこうしたかったのよ?」
『ほう、やけに今日は積極的なのは…バレンタインの魔力か?』
そうかもしない。
バレンタインの魔法がかかっていて…ちょっと力をくれたのかな?
幸せな一日を過ごせるようにって…
『寝室へ行こうか?』
うん…と返事を聞く前に、フワリと私を抱き上げて二階の寝室まで連れていってくれる
杏寿郎さんの首に腕を回して…彼を見上げると、綺麗な整った顔に見とれてしまう
「杏寿郎さん…大好き…」
まだ寝室に着いてもいないのに、フッと洩れた愛の告白
彼の眼差しが向けられて、おでこにチュッとキスされた
『その言葉、俺の上でも聞かせて欲しい』
俺の上…?
えっちの最中に言ってってこと…?
これからすることをわかっているのに、途端に恥ずかしくなってしまう
『今更恥ずかしいのか?俺は既に君の全てを知っているのだが?』
恥ずかしい…よ
いつになっても…体を明るいところで見られるのは恥ずかしいし、気持ちいい顔を見られるのだって恥ずかしい…
でも…それもいつも、最初だけ。
いつの間にか杏寿郎さんのペースに飲み込まれて、もっと恥ずかしい姿を見せているのだから
「杏寿郎さんの全ても…見たい…」