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夜空に輝く星一つ。【鬼滅の刃 短編 中編 】

第8章 evergreen[不死川実弥]



 口内を貪りながら腰を緩く打ち付ける。はなの痛みが快楽に変わる瞬間を逃したくなかった。体を隙間なく密着させて心臓の鼓動さえ俺のものにする。

「あっ、んっ…ん…」

「痛みはねェか?」

「んっ。気持ち…い。だからもっと…」

「くそっ。煽るんじゃねェ!」

 あんなに鳴いていたひぐらしが、いつの間にか声を潜めていた。聞こえるのははなの息遣いと肌の擦れる音、そして畳が軋む音だけだ。
 この一つ一つがはなを抱いているのだと証明するかのように耳に響く。

「俺はもう加減はできねェ。つらかったら蹴飛ばしてでも俺を止めろ。いいなァ?」

 はなは返事もせずに俺の首に縋りついた。それを合図に腰を打ち付ければ、体を反らす。剥き出しになった胸は律動に合わせて揺れ、俺を視覚からも昂らせた。

「あっ…ん…実弥…さん…」

 うわ言のように俺を呼ぶはなの胸の突起を口に含んで舌にその感覚を覚えさせた。いつ失うかわからねぇ体の感覚に、はなの痕跡を叩き込んでやる。手に触れる髪の一本だって逃さねェ。
 
 ──はなは俺のもんだ。

「はなっ…」

「ゃ…ん…」

「おめぇの中すげェ…」

 気を抜いたら今すぐに出ちまいそうだ。迫り上がる感覚を必死に耐えた。まだ…こいつの中にいてぇ。

 はなは指の欠けた手を必死に握ってきた。
 まるで、俺が逝ってしまわねぇように繋ぎ止めておくような握り方だ。

「実弥さん…いかないで…お願い…」

 まなじりから何度も何度も涙を流すはなに俺は……

「いかねぇでくれとは酷じゃねぇか。もう出そうだぜ」

 こんなすっとぼけた事しか言えねぇんだ。おめぇが言いたいことは痛いほどわかってる。だがすまねェな…知らねぇフリしかできねェんだよ。その言葉に頷いちまったら、俺は先に逝ったやつらに申し訳が立たねェ。

「そうじゃ…ないの…」

「いいから黙っとけェ。こっからがいいとこだろぉが」

 はなの言葉も己の言葉も誤魔化すように、打ち付けるような抽送を繰り返した。
 肌と肌がぶつかる音にただ想いを馳せて、はなを抱いている幸せを噛み締め、体温を分かち合う時に身を委ねる。これが俺の最上の幸せだ。

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