第6章 咲 き 香 る[煉獄杏寿郎]
耳まで赤くするはなの白く柔らかな肌から香る甘い香り。それは媚薬のように酔わせ、劣情へと引き込む。唇を細い首筋に這わせるだけでは物足りない。素肌を暴き、肌を重ね、君は俺のものだと証明したい。
香りに負けない甘い声を響かせて、気の遠くなるような快楽を与えたい。うずうずと、体をかけまわる昂りからはなを抱く腕に力が入る。
あぁ、俺のはなだ。やっと帰ってきた。ここが俺の愛しい居場所だ。
君は一日一日を、俺を愛おしみ過ごしてくれていたのであろう。満開の桜を目の前に、焦りもあったのではないか? 台所の窓から、外を覗く君の姿が目に浮かんだ。何度今すぐに抱きしめに帰りたい衝動に駆られたか。そんな君に、言わなければならない言葉を忘れていた。
「待っていてくれてありがとう。ただいま」
「おかえりなさい! 杏寿郎様」
頬を染めたはなが、桜が綻んだような笑顔を見せる。
込み上げる愛おしさから手を頬へ滑らせると、親指でそっと染まった頬を撫でた。
「これだけは許して欲しい」
もう片方の手で腰を引き寄せると、頬に触れていた手で顎を持ち上げ唇を重ねた。
淡く色づいた頬は、色濃く染まって行く。俺から想いに応えるように。
ゆっくりと重ねられた唇はゆっくりと離れて行く。重ねるだけの口づけに、身も心もすっかり溶けてしまった。
「君は香りだけではなく唇も甘いのだな」
「はぅ…っ」
はなの唇に親指を滑らせ、下唇を押して口を開かせた。
口づけによって赤みを増した口唇が色っぽく開かれると、止められない。
「もう少し…良いか?」
恥じるように小さく頷くはなの唇を開かせて舌を滑りこませハナの舌を絡めとった。
腰に回した腕でもっと引き寄せると、口づけは一層深くなる。
「んっ…はぁっ…」