第4章 遭遇
「勝己くん、遅い…」
支払いで何かあったのかな…
さくらは外から店内を覗こうと背伸びをした。
すると見慣れたツンツン頭。
「あ…」
「待たせたな」
「レジの人にイチャモンつけたりしてないですよね?」
「するか!んなモン!俺を誰だと思ってんだよ!」
「勝己くんだと思ってるから心配なんです」
「アァン!?どういう意味だ、コラ!そんなん言うなら、これやんねーぞ」
爆豪が先ほどのマスコットをヒョイと持ち上げる。
「うー…申し訳ありません。欲しいです!」
「ハンッ」
渋々頭を下げると満足そうに爆豪が笑う。
そして、爆豪にそっくりな悪魔のマスコットをさくらの手にポンと置いた。
「可愛い♡」
目つきの悪いそれをツンとつつく。
やっぱりそっくりだと思った。
「フン」
口を尖らせながら、爆豪もさくらに似ていると言って買ったマスコットを家の鍵に付けた。
「私も付けよ。これで勝己くんといつも一緒だ」
「…じゃ、ついでにこれも付けとけよ」
「え…」
自分の鍵にも付けて満足するさくら。
そんなさくらの首筋に爆豪の手がそっと触れた。
「ひゃっ!な、何ですか!」
「オラ!大人しくしろ」
乱暴な言葉とは裏腹にさくらの髪を避けるその手は優しい。
ドキドキする…。
さくらは思わず頬を押さえた。
「もういいぞ」
そう言われて自分の胸元に視線を下ろすと、小さな赤いハートのネックレスが光っていた。
「あ、あの…これ」
「さっきの店で買った。テメェに、その…さっきの店のモンより似合うと思った」
「…」
あまりのことに言葉にならなかった。
だから、時間かかってたんだ…
さくらは喉奥が熱くなるのを感じた。
「ま、気にいらねぇなら、付けなくてもいいけどな」
「っ!!そんなわけない!これすごく好きです!!!すごく…すごく嬉しいです…ありがとう」
「そんな良いモンじゃねぇと思うけどな」
「っ!これ以上のものなんてないです!」
だって勝己くんの瞳の色。
「…お揃いです」
爆豪の耳に光るピアスと見合わせて思わず頬が緩む。
「一生付けます!」
「ハッ!大袈裟!」
そう宣言するさくらを爆豪は笑った。