第4章 遭遇
さくらと出会う前に付き合った女は何人かいた。
たまたま街で声をかけてきたやつ、仕事関係、俺が助けたやつ…色々だ。
そのいずれもが向こうから寄ってきたくせに、向こうから去っていった。
理由は、俺が仕事ばかりに明け暮れていたから、らしい。
は?ふざけてんのか?
俺はヒーローだ。
ナンバーワン目指してんだ。
その俺が女なんかにうつつを抜かすとでも思ったのか?
『私よりもそっちに行くのね』
当っ前だろうが!!!
『また仕事…今日は休みって言ってたじゃん!』
それを踏まえて好きだとか抜かしたんじゃなかったんか。
ま、んなこと面倒なことになるって目に見えてっから、わざわざ言わねェけど。
だから。
『別れたいの』
そう言われても
『好きにしろ』
そうとしか言わなかった。
謝罪だの後悔だの未練だの相手が欲しいものは明らかだったが何一つやらなかった。
『…引き留めもしないのね』
俺はナンバーワンヒーローを諦める気はないし、あっちだって諦める気はない。
平行線だ。もう何一つ交わらない。
それが明白なのに、なんで俺がんなことしなきゃなんねェんだ。
『どうせ私のことなんか最初っから好きじゃなかったって、分かってるんだから』
ハァ!!?
好きじゃなかったら何とか謝ろうとしてワケわからんブランド物なんか買わなかったし。
っつーか、テメェら嬉しそうに笑ってたじゃねぇか!
っつか、好きじゃなかったら、事件が起きる度にテメェらの家の方向じゃないかってヒヤヒヤしたりしなかったわ!
…何で俺の気持ち、勝手に決めつけんだよ。
勝手に好きだとか言って、勝手に期待させといて、勝手に決めつけて、勝手に去っていきやがる。
ただ俺は。
一度でいいから俺は…
たった一言、
『いってらっしゃい』
好きな子からのその一言が欲しかっただけなのに。