第9章 過去
「先生。ありがとうございました。お世話になりました」
「はい。今度はマッサージにでもいらしてね」
「はい」
お礼を告げて、ビルを出る。
「で?名前の過去で何か分かったわけ?」
「うーん…僕の記憶と名前の記憶を合わせると人魚に近いものだったんじゃないかな?」
「人魚ではないんだな」
「人魚の肉を食べると不老不死になるって言われてるよね?でも僕は寿命を全うしてして死んだし。名前は虹色に光る小さいものだったんでしょ?」
「うん」
「それって妖精みたいなもんじゃない?」
「まあ、その辺は大昔のことだから確かめようもないしな」
人魚に近いものだったから、勘違いされて身体を切り刻まれたのか。
呪術師って怖い。
「僕のことだから、もしかすると名前を自由にする際に縛りを交わしていたかもしれないしね」
「あー。クズだからな。あり得るな」
「縛りって何?」
「うーん…それは秘密♡」
また胡散臭い顔をする悟さん。
その顔には正直いい思い出がないよ。